こちらの記事でわかること
近年、ChatGPTをはじめとする生成AIの普及により、さまざまな業界でAIを活用した業務効率化が進んでいます。文章作成やデータ分析などでAIを業務に取り入れる企業が増える一方、現場での活用はどの程度進んでいるのでしょうか。
今回、製造業・卸売業・小売業で働く361名を対象に独自調査を実施しました。
本記事では、そのうち「現在、仕事の中でAIを活用している」と回答した113名を対象とした調査結果をもとに、在庫管理におけるAI活用の実態を紹介します。

「AIを活用している(または活用したい)業務はどれですか?」という質問に対し、もっとも多かった回答は「書類作成・メール・文章作成などの間接業務全般(49.6%)」でした。
次いで、「データ集計・分析・レポート作成などの経営管理業務(33.6%)」「商品企画・価格設定・販促アイデア出しなどの企画・マーケティング業務(28.3%)」が続いています。
一方で、「受発注・見積・請求などの販売管理業務(24.8%)」「在庫照会・ロット管理・棚卸などの在庫管理業務(23.0%)」「生産計画・進捗管理・工程管理などの生産管理業務(21.2%)」という結果でした。
この結果から、AI活用は文章作成や情報整理といった間接業務を中心に広がっている一方、在庫管理をはじめとする業務管理への活用は限定的であることがわかります。
在庫管理業務へのAI活用は、生産管理業務や販売管理業務と並び、いずれも2割程度※にとどまっています。
※「日常的にAIを活用している」「試験的・部分的に活用している」と回答した113名の中での割合である点にご留意ください。
全回答者361名に占める割合で見ると、在庫管理・生産管理・販売管理へのAI活用はさらに限定的であることがうかがえます。在庫照会やロット管理、棚卸など、在庫管理は企業活動の基盤となる業務です。文章作成などの補助業務と比べ、新しい技術の導入には慎重さが求められます。
こうした背景も、AI活用が2割程度にとどまっている一因と考えられます。

AIへの関心が高まる一方で、実際の業務では活用に至っていないケースも一定数存在します。
本調査では、製造・卸売・小売業で働く361名のうち、「業務にAIを活用していない」と回答した248名を対象に、AI活用が進まない理由について調査しました。
AI活用が進んでいない理由として、もっとも多かった回答は、「特に理由はない(48.0%)」でした。次いで、「何から始めればよいかわからない(24.6%)」「どのツールを選べばよいかわからない(16.9%)」が続いています。
「特に理由はない」がもっとも多かったことからも、AIを業務で活用していない回答者の多くが、AIそのものに否定的というわけではないことがわかります。
これらの回答からは、AIそのものへの関心が低いというよりも、具体的な導入方法やイメージを持てていない人が少なくないことがうかがえます。
AIが実際にどの業務で活用されているのか、導入が進まない理由など、本調査のより詳しい結果は以下の記事で紹介しています。
関連記事:製造・卸売・小売業で働く361名に聞いたAI活用の実態調査
AI活用が進みつつある一方で、在庫管理をはじめとする業務管理では、表計算ソフトを利用した業務管理が広く行われています。エクセルやGoogleスプレッドシートは、手軽に導入でき、自社の業務に合わせて柔軟に運用できることから、多くの現場で活用されている業務管理ツールです。
当社が別途実施した独自調査(回答者:製造・卸売・小売業に従事する843名)でも、業務管理に表計算ソフトを利用しているケースが一定数見られました。

「現在、業務管理に表計算ソフトを利用していますか?」という質問に対し、「すべての業務で利用している(14.7%)」「一部の業務で利用している(32.3%)」という結果になりました。
このことから、約半数(47.0%)が、業務管理に表計算ソフトを利用していることがわかります。
表計算ソフトが現在も多くの現場で利用されている背景には、導入のしやすさと運用の柔軟性があります。自社の業務内容に合わせて管理項目や計算式を自由に設定できるため、多くの業務で欠かせないツールとなっています。
表計算ソフトは現在も重要な業務管理ツールですが、その一方で、業務量や取扱データの増加に伴い、現在の管理方法に限界を感じ始めている人も少なくありません。

「現在、業務管理に表計算ソフトを利用している」と回答した396名を対象に、「現在の表計算ソフト管理に限界を感じていますか?」と尋ねたところ、「感じている(52.3%)」「感じていない(47.7%)」となりました。
利用者の半数以上が、現在の管理方法に限界を感じていることがわかります。

続いて、「現在の表計算ソフト管理に限界を感じている」と回答した207名を対象に、限界を感じる具体的なポイントについて調査しました。
もっとも多かった回答は「集計作業に時間がかかる(30.0%)」、次いで「入力ミスが発生しやすい(21.3%)」「属人化している(17.4%)」「データ量が増えて管理しづらい(15.5%)」となっています。
これらの結果から、業務管理における表計算ソフトの課題は、集計作業の負担や入力ミス、属人化、データ量の増加など、運用のあらゆる場面に表れていることがわかります。

表計算ソフトを利用している396名を対象に、「表計算ソフトで行っている業務を最適化できるシステムがあれば、どの業務をシステム化したいですか?」と尋ねたところ、もっとも多かった回答は「在庫管理業務(38.4%)」でした。
次いで、「受発注業務(31.6%)」「売上管理業務(30.6%)」「生産管理業務(25.5%)」が続いています。
この結果から、表計算ソフトで管理している業務の中でも、在庫管理はシステム化へのニーズが高い業務であることがわかります。
在庫管理は、商品の入出荷や棚卸、受発注業務との連携など、多くの業務と関わる管理領域です。取り扱う商品や部材の種類が増えるほど、正確性やリアルタイム性も求められることから、業務の効率化を目的としてシステム化を検討する人が多いと考えられます。
在庫管理に限らず、業務量や管理対象、運用体制は企業ごとに異なるため、自社の状況に合った管理方法を選ぶことが重要です。
小規模な運用では表計算ソフトが適している場合もありますが、業務が拡大し、集計作業や属人化といった課題が大きくなってきた場合には、在庫管理システムやERPなど、業務に特化したツールへの切り替えが選択肢となります。
ここでは、在庫管理に特化した手軽なツールから、より広い範囲をカバーするものまで、代表的なものを紹介します。
スマートフォンやタブレット端末を利用して在庫管理を行えるツールです。バーコードやQRコードの読み取りによる在庫確認や入出庫登録など、日常的な業務をアプリ上で完結できます。
複数の拠点や担当者とも同じ在庫情報を共有でき、比較的導入しやすいことから、紙や表計算ソフトからのデジタル化の第一歩としても選ばれています。
ノーコード・ローコードツールは、プログラミングの専門知識がなくても、業務に合わせたシステムを構築・運用できる開発プラットフォームです。入力画面や管理項目、ワークフローなどを柔軟に設定できるため、自社の業務にフィットさせやすく、導入後も必要に応じて機能を追加・変更できます。
また、在庫管理だけでなく、顧客管理や案件管理など、幅広い業務に応用・拡張できる点も魅力です。
在庫管理システムは、在庫管理業務に必要な機能を備えた専用システムです。
在庫数や入出庫履歴、棚卸、ロット管理、ロケーション管理などを一元化することで、在庫状況をリアルタイムで把握します。また、ハンディターミナルなどと連携し、入出荷業務の効率化やヒューマンエラーの削減を実現します。
在庫管理業務に特化した機能を備えているため、取扱商品や在庫量が多い企業に適した選択肢のひとつです。
ERP(Enterprise Resource Planning)は、在庫管理だけでなく、生産管理や販売管理、購買管理、財務会計など、企業全体の基幹業務を一元管理するシステムです。生産・販売・購買の実績データと連動して在庫の情報が更新されるだけでなく、それに伴う会計仕訳も自動で反映されるため、モノとお金を一体で管理することが可能です。
部門間で情報を共有しやすく、経営判断に必要なデータもすぐに把握できます。
在庫管理システムよりも管理範囲が広く、基幹業務を一元的に管理したい企業に適しています。中堅企業から大企業を中心に、複数の拠点・部門にまたがる基幹業務システムとして活用されています。
本記事では、製造業・卸売業・小売業を対象とした調査結果をもとに、在庫管理におけるAI活用の実態や、業務管理における表計算ソフトの利用状況、システム化ニーズについて紹介しました。
調査結果からは、AI活用は広がりつつあるものの、在庫管理への活用はまだ限定的であることがわかります。また、多くの人が現在もエクセルやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトを活用して業務管理を行っている実態も明らかになりました。
一方で、業務量や管理対象の増加に伴い、現在の管理方法に限界を感じる声も少なくありません。「在庫管理 × AI」と聞くと、最新技術の導入をイメージする方も多いかもしれません。しかし、今回の調査から見えてきたのは、多くの現場において、管理方法そのものの見直しが求められているという実態です。
AIの活用を検討することも重要ですが、その前提として、自社の業務量やデータ量、運用体制に適した管理方法を整えることが、在庫管理の効率化につながる第一歩といえるでしょう。