こちらの記事でわかること
そもそも「在庫」とは何か?について定義しましょう。卸売業・小売業にとっては「商品」ですが、製造業にとっては製造工程により「原材料」「部品」「仕掛品」「半製品」「製品」等に分類されます。いずれも会計上の「資産」に計上されます。今回は卸売業・小売業にとっての在庫管理ですので、以降は在庫=商品として定義します。
次に在庫管理とは何か?について説明します。「資産である在庫を適切に管理すること」に尽きますが、卸売業・小売業にとっての在庫管理とは何かについてもう少し具体的に説明すると、「必要な商品を、必要な時に、必要な量を、必要な場所へ供給できるように、販売等の他の活動と照合して適切に管理すること」だといえます。これがどれだけ「言うは易く行うは難し」なのか、在庫管理を担当されている方なら誰もが感じるところでしょう。それでは在庫管理とは在庫を適切に管理することだけが目的なのでしょうか。在庫を適切に管理できるとどのような効果があるのか、下記に列挙します。
つまり、在庫管理とは収益・利益の向上、キャッシュフロー改善、品質改善につながるとても重要な活動だといえます。
さて、在庫管理の目的と効果を認識したところで先ずは何からスタートさせるべきか?やはり大事なのは現状を把握することですが、在庫管理の現状分析では大きく2つの観点があると考えます。
「業務にスポットをあてた分析」とは、他の回のコラムで何度か紹介した業務フローを用いた業務の視覚化を指します。在庫管理はもちろんのこと、販売管理等の他の関連する活動とどう紐づいているのか?を視覚化しましょう。なお、作成イメージは「中小企業が挫折する「マスタ登録」という名の鬼門」を参考にしていただければと思います。また、個々の業務を視覚化した上でどれだけの工数(業務時間)がかかっているか、ざっくりでかまいませんので、担当者にヒアリングする等して一覧化しましょう。上記の作業はとにかく大変ですが、目的・効果が経営に直結する内容なだけに、時には外部の力も借りながら根気よく進めてほしいところです。
次に「在庫そのものにスポットをあてた分析」を説明します。下記はいずれも在庫分析の定石ともいえるフレームワークなので、はじめて知ったという方はこの機会に実践してみましょう。
売上に貢献する在庫を優先的に管理することを目的に在庫の優先順位を設定する方法です。具体的には在庫別の出荷量や売上げを調査し、全体に占める割合が多い順にA、B、Cとランクを付けて、Aは在庫が切れないように発注、Cは在庫が切れてから発注、Bはその間で都度様子を見て発注等の発注基準を定めていきます。
「システムを導入する前に考えておくべきポイント」で例として在庫回転数を説明しましたが、在庫回転数(率)が高い在庫ほど、算定期間内に売れている商品ということになりますので、これもABC分析のように在庫の種類によって優先順位をつけるのに効果的な分析方法といえます。
上記はあくまで売上への貢献度を図るフレームワークですが、在庫からどの程度利益を得ているのかを図る「交差(交叉)比率分析」といった利益への貢献度を図るフレームワークもありますので合わせて分析することをおすすめします。
現状分析によりどの業務が効率/非効率なのか?どの業務に時間(コスト)をかけているのか?どの在庫(商品)が売れている/いないのか?等が見えてきたらいよいよ打ち手(施策)の検討です。結論から申し上げますと、人力やExcel等の表計算ソフトでは限界がありますので、販売管理等と連動した在庫管理システム、WMS、ERPといったシステムを導入し、またバーコードやICタグを読み取るハンディといったマテハン機器と組み合わせて少ない人員、時間で効率的に管理ができる仕組み化を構築することが最も良い選択だと思います。一方で、非システム領域についてもやり方次第で如何様にも効率化を図ることができる打ち手もありますので、代表的な打ち手を下記に記載します。
その他にも、当たり前ですが「倉庫内を整理整頓してきれいな状態にしておきましょう」とか、「マニュアルを作成して周知徹底させましょう」とか考えつく打ち手はあるかと思います。しかし、それらができなかったからこそ多くの中小規模事業者は頭を抱えているでしょうし、社員への意識改革はそう簡単にはいかないでしょう(意識改革が出来れば一番良いのは言うまでもありませんが)。したがって、意識改革に頼らずシステムや機器の力を借りて仕組み化してしまい、社員の意識にかかわらずやらざるを得ない状態にしておくことが効率化への近道だと考えます。
在庫管理の目的を達成しその効果を存分に享受するには、地道な現状分析が不可欠であり、システムや機器の導入によって、全体を仕組み化することが重要です。これらの工程はいずれも膨大且つ時間のかかる作業ですので、社内での完遂が難しければ外部の専門家に調査・分析を依頼したり、他社事例を参考にしてみたり等の工夫も必要ですが、在庫管理の目的や目標を明確にし、何のためにこうした取り組みをやるのかについては、他でもない当事者が考え抜くべき内容だと思います。