こちらの記事でわかること
基幹システムは、在庫管理、販売管理、生産管理、購買管理、財務会計など、企業活動の根幹となる業務を支えるツールです。日々の取引を正確に処理するだけでなく、経営判断に必要な情報を提供する役割も担っており、企業の競争力や成長を支える重要な基盤となっています。
一方で、多くの企業では、長年使い続けてきたシステムや管理手法を前提に業務が構築されており、事業環境の変化に十分対応できていない状況が見られます。セキュリティ対策や最新技術の活用、制度改正への対応といった面で、多くの制約や非効率が生じているのが現状です。
このような背景から、基幹システムの刷新は単なる老朽化対策だけでなく、業務構造や情報管理を見直し、中長期的な経営基盤を再構築する重要な機会として捉える必要があります。

当社が行った独自調査(回答者:製造・小売・卸売業に従事されている599名)において、Q2:「業務を効率化するためにシステム導入やリプレイスを検討したことはありますか?」という質問に対し、78.5%が「いいえ(検討したことがない)」と回答しました。つまり、多くの企業が”既存のシステムをそのまま使い続けている”、あるいは”手作業や表計算ソフトでの運用を続けている”状況にあることがわかりました。
同調査において、Q4:「今すぐにでも必要と感じる管理システムはどれですか?」という質問では、回答の約半数に”具体的なシステム化のニーズがある”ことが明らかになりました。
2つの調査結果から見えてくるのは「現場では管理システムの必要性を感じているものの、それが経営判断や実行には結びついていない」というギャップです。こうしたギャップを解消し、適切なタイミングで基幹システムのリプレイスを実行することが、企業の競争力維持には不可欠です。
※その他の調査結果に基づくレポートは、以下のページにまとめています。詳しくはリンク先をご覧ください。
基幹システムのリプレイスは、業務構造そのものを見直すプロジェクトです。現場の運用から経営判断まで幅広く影響するため、失敗のリスクも決して低くありません。
以下では、リプレイスでよく見られる失敗要因を3つのカテゴリに分けて解説します。
プロジェクトの成功には、事前準備が8割と言われるほど、計画フェーズが極めて重要です。しかし、以下のような準備不足や計画の甘さが後々のトラブルに直結します。
要件定義はプロジェクトの全体像を構築する起点となります。しかし、関係する各部門のニーズを整理しないまま進めてしまうと、導入後に「必要な機能が足りない」「現場の運用と合わない」といった問題が表面化し、対応に苦慮することになります。
リプレイスには、設計・開発・移行・教育(トレーニング)・検証・稼働後のフォローなど、多くの工程が求められます。即ち、実態に則さない短期間・低予算でのプロジェクト推進は品質を大きく低下させる要因となります。結果的に、稼働後の不具合や運用トラブルにつながります。
基幹システムのリプレイスは、IT担当者や特定部門だけで完結するものではありません。管理部門や経営陣を巻き込んだ全社的な取り組みであり、足並みが揃わなければプロジェクトは円滑に進みません。
リプレイスには各部門の協力が欠かせませんが、部門間での情報共有や合意形成が不十分な場合、それぞれが異なる前提や優先順位で要件を主張することになります。その結果、プロジェクトの方向性に齟齬が生じ、調整に多くの時間を費やします。また、特定部門の要望が優先されることで全体最適が損なわれる可能性があります。
経営陣の関与が限定的な場合、現場では「なぜやるのか」「何を目指すのか」が不明確なまま進むことになります。目的が共有されなければ、現場の協力も得づらくなり、プロジェクトへの優先度も低くなります。また必要な予算や人材も配置されず、プロジェクト自体が形骸化するリスクが高まります。
構想や要件定義が適切に行われていても、実行段階での判断ミスや体制不備があれば、プロジェクトは停滞します。こうした問題の背景には、実行体制のリソース不足や、ベンダーとの認識のズレがあります。
リプレイスを進める上で、外部パートナーとの関係性がプロジェクトの進行に大きく影響します。ベンダー選定にあたっては、提案内容や価格だけでなく、自社業務への理解度や支援体制まで含めて評価することが重要です。また、要件定義やプロジェクトの進め方をベンダーに委ねすぎることで、自社の業務実態に即さない設計になるリスクが高まります。
レガシーシステムを一度にすべて切り替える「ビッグバン方式」は、業務への影響が大きく、切替時のリスクも高くなります。不具合が発生した場合の影響範囲が広く、想定外のトラブルが同時多発することで対応が追いつかなくなるおそれがあります。特に、複数の拠点や部門を持つ企業では注意が必要です。
まず着手すべきは「なぜこのタイミングで基幹システムを入れ替えるのか」「何を達成したいのか」を明確にすることです。既存システムの保守期限切れやパフォーマンスの限界は、リプレイスを始めるきっかけにはなりますが、プロジェクトの方向性や判断の基準としては不十分です。企業として何を実現したいのか、導入の目的を具体的に明示する必要があります。
このように、導入の背景や目的が全社的に共有されている状態を作ることが、プロジェクト全体の方向性を定める第一歩となります。
業務フローを可視化する際は、単に手順を記述するだけでなく、各処理の理由や判断基準まで確認することが重要です。ここで求められるのは、理想像ではなく現状の正確な把握です。
特にシステム外で行われている作業には注意が必要です。表計算ソフトや紙による管理、メールや口頭での調整で業務が回っている場合、こうした実態を把握せずに進めると、システムでカバーすべき範囲を見誤ります。現状業務の整理は改善点を洗い出すだけでなく、システム選定や導入後のミスマッチを防ぐための重要なポイントです。
基幹システムのリプレイスは特定部門だけで完結するものではありません。検討段階から経営陣と現場の双方を巻き込み、部門をまたいだ体制を構築することが不可欠です。
各部門の担当者は、主体的に判断・調整できる人材が求められます。単なる窓口ではなく、現場の声を集約し、必要に応じて部門内で合意形成を図れる人材が理想的です。
要件定義では、システムに必要な機能や条件を具体的に定めます。現状業務の整理と導入目的を踏まえて、要件を明確化することが重要です。
要件定義とは、リプレイスで実現すべき範囲を絞り込む作業です。 導入目的をもとに要件を整理することで、プロジェクト全体の見通しが立てやすくなります。
システム導入にかかるコストだけでなく、移行期間や現場対応まで含めた総合的な設計が求められます。見えにくい準備作業ほど工数がかかるため、余裕を持った計画が必要です。
こうした業務は、計画段階で過小評価されることが多く「形だけやればいい」と扱われがちです。運用が安定するまでを見据えたリソースの確保が欠かせません。
基幹システムのリプレイスにおいて、ベンダーはプロジェクトの成功を左右する重要なパートナーです。以下では、ベンダー選定と協働体制の構築において、押さえておくべき3つのポイントを解説します。
基幹システムは自社業務を前提として導入するため、ベンダーの理解度が求められます。導入製品の機能が揃っていても、業務の流れや判断基準、現場の制約を正しく捉えられていなければ、設計段階で認識のズレが生じます。同じ業種・業態での導入実績はひとつの目安になりますが、表面的な機能説明だけでなく、自社業務に合った提案ができるかも重要な判断材料です。
業務に関する判断は自社が担い、ベンダーは技術や設計手法、移行ノウハウを提供するという役割分担が明確になって初めて、プロジェクトは安定します。ベンダーに判断を委ねすぎると、システムの仕組みや設計意図を理解しないまま稼働を迎えることになり、稼働後の運用改善を自社主導で進められなくなります。自社とベンダーの役割を明確にし、対等な協働関係を築くことが不可欠です。
ベンダー選定後に軽視されやすいのが、契約内容と責任範囲の整備です。取り決めが不十分な場合、対応範囲をめぐって認識のズレが生じ、復旧や改善が遅れます。
特に以下のような項目は、明文化しておく必要があります。
基幹システムでは要件変更が発生することは珍しくありません。対応ルールを事前に明確にしておくことで、変更が生じてもスケジュールやコストへの影響を最小限に抑えられます。
契約書や仕様書は単なる法的文書ではなく、プロジェクト全体を円滑に進めるための合意事項です。契約を結ぶ際に役割・責任・対応範囲を明文化して、双方が納得した上でプロジェクトを開始することが重要です。
基幹システムのリプレイスは、単に古いシステムを新しくする取り組みではありません。業務の進め方を見直し、データの管理方法や意思決定の仕組みを再構築するプロジェクトです。
失敗の多くは、想定外の出来事によって起きるのではなく、整理不足と判断の先送りが積み重なることで生じます。着手前に検討すべき事項の整理を行い、稼働後まで見据えた計画を立てることで、事後対応に追われない、計画的なリプレイスが可能です。
本記事が、基幹システム刷新を進める上でひとつの指針となれば幸いです。
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