システムを導入しているのに、なぜDXは機能しないのか? システムがバラバラな中小企業で起きている根本的な問題を解説

システムを導入しているのに、なぜDXは機能しないのか? システムがバラバラな中小企業で起きている根本的な問題を解説

Summary

こちらの記事でわかること

  1. 01.システムを導入しているのに、なぜDXは機能しないのか?
  2. 02.DXを進めているはずの会社でおこる”違和感”
  3. 03.なぜシステムは、バラバラに導入されていくのか
  4. 04.DX=システム導入、ではない
  5. 05.本当に欠けているのは「操作性」ではなく「つながり」
  6. 06.ERPがなぜ企業にとってかかせないシステムとなっているのか
  7. 07.いま見直すべきなのは、システムではなく設計思想
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システムを導入しているのに、なぜDXは機能しないのか?

業務を効率化する目的で、システムを導入している中小企業は少なくありません。
在庫管理、販売管理、生産管理、財務会計など、それぞれの業務に応じたシステムを選び、段階的に導入してきた会社も多いでしょう。その結果として、紙の書類は減り、入力作業の正確性は向上し、システムを導入する前より業務効率が改善された…はずです。

しかし実態としては、「現場が楽になった実感がない」「経営判断が速くなっていない」との声が多く聞こえてきます。これは、システムを導入していても、ごく一部の業務にしか焦点を当てていないことに加え、縦割りのの情報管理体制にメスを入れることができなかったため、結局部分最適な導入に終始したという、根本的問題に取り組んでいなかったケースが多いことが挙げられます。

一方で、このような状態を「DXに失敗している」と非難しているわけではありません。
むしろ、生産性や顧客体験の向上のためDXに前向きに取り組み、必要だと考えたシステムを一つずつ導入してきた姿勢は大変素晴らしく、このような取り組みができる会社はごく書数です。ただ問題は、一部の業務はデジタル化されたが、他の業務や部署とのつながりまでは設計されていなかった、という状況です。

このように、本記事ではシステムを導入しているにもかかわらず、DXが十分に機能していないように見える理由を整理しています。特定のシステムを取り上げるのではなく、各システムがバラバラに存在していることで何が起きているのか、その構造を、30年超にわたり中小企業向けERPシステムを開発・提供してきた当社独自の視点で解説していきます。

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DXを進めているはずの会社でおこる”違和感”

DXに取り組んだことで個々の業務はデジタル化され、システム上でデータを管理し、正確に処理できるようになっているにもかかわらず、業務全体としての効率やスピードがさほど改善していないという状況に気が付くことはありませんか?
この違和感は、特定の業種・業界や規模に限らず、DXをはじめた会社に共通して現れています。

システムで業務は楽になったが、仕事は減っていない

システムを導入することで、手作業や紙媒体での処理は確かに減っています。しかしその一方で、システムごとに異なる操作や確認作業が発生し、結果として業務全体の負荷が大きく変わっていないケースがあります。入力作業は効率化されたものの、その後の確認や調整、別システムへの反映といった作業が残り、「仕事の総量が減った」とは言い切れない状況です。

数字を見るために、別の作業が増えている

売上や在庫、原価などのデータをそれぞれのシステムで管理している場合、経営判断や会議で使う際にはそれらをまとめる必要があります。
結果として、複数のシステムからデータを取り出し、Excelなどで再度集計するという作業が発生します。システムを導入しているにもかかわらず、「数字を把握するための新たな手間」が生じているのです。

現場と経営で見ている数字が違う

現場側では在庫管理システムの数値を基に業務を進め、経営側では会計システムの数値を重視する、といった役割分担は珍しくありません。それぞれのシステムの数字は正しく管理されていても、集計方法や更新タイミングの違いにより、完全には一致しないことがあります。この差異を説明し、調整するための時間が必要になり、意思決定のスピードに影響を与えることもあります。

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なぜシステムは、バラバラに導入されていくのか

システムが分断された状態は、決して意図して作られたものではありません。多くの場合、課題を感じた時点で必要だと判断されたシステムを順に導入した結果として生まれています。

なぜ中小企業でシステムの分散が起きやすいのか、その背景を整理します。

部署ごとに最適なシステムを選んできた結果

中小企業では、業務ごとに課題が顕在化するケースが多く見られます。受注処理が煩雑になれば販売管理システムを検討し、在庫管理が追いつかなくなれば在庫管理システムを導入する、といった具合です。それぞれの導入判断は合理的であり、足元の業務改善には確かに効果があります。
ただし、その判断はあくまで個別業務を前提としたものであり、業務全体のつながりまでは考慮されていないことがほとんどです。

導入判断が「部分最適」にならざるを得なかった理由

中小企業では、システム導入を専門的に統括する部署や人材がいないケースが一般的です。そのため、各部署や担当者が自分たちの業務にとって使いやすいシステムを基準に選定を行います。結果として、操作性や価格、導入スピードといった観点が優先され、他業務との連携や将来的な拡張性は後回しになりやすくなります。この判断はリソース不足の中小企業にとっては現実的かもしれませんが、後になって業務全体を見直す際に「分断」という形で影響が現れます。

中小企業に情シスが存在しない現実

大企業であれば、システム全体を俯瞰し、設計や統制を行う情報システム部門が存在します。しかし中小企業では、その役割を担う専任組織がないことがほとんどです。結果として、システムは現場判断で「必要になった順」に導入され、全体像を描かないまま積み重なっていきます。こうして導入された複数のシステムは、それぞれが正しく機能していても、会社全体としてはつながりにくい構造を生み出します。

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DX=システム導入、ではない

DXという言葉が広く使われるようになったことで、「業務をデジタル化すること=DX」という認識が定着しました。その結果、システム導入そのものが目的化し、本来考えるべき業務全体の設計が後回しになるケースが増えています。その誤解がどのような影響を及ぼしているのかを整理します。

デジタル化とDXは、似て非なるモノ

業務のデジタル化は、紙や手作業をシステムに置き換える取り組みです。一方でDXは、業務の流れや意思決定の仕組みそのものを見直すことを含みます。中小企業ではまずデジタル化から着手するケースが多く、その段階で一定の成果を感じられることもあります。しかし、デジタル化が進んだだけでは、業務全体の構造は変わりません。業務同士の関係性が見直されていない限り、DXとはいえない状態が続きます。

業務はデジタル化されたが、データは分断されたまま

各業務に対応したシステムが導入されると、個々の業務データは正確に管理されるようになります。ただし、それらのデータはシステムごとに独立して存在します。受注データ、在庫データ、会計データがそれぞれ別の場所にあり、共通の前提で管理されていない場合、業務を横断した把握が難しくなります。結果として、業務はデジタル化されたにもかかわらず、データは分断された状態のまま残ります。

属人化が「システム化」されただけのケース

システムを導入したことで、手順や操作が明確になった一方で、特定の人しか把握していない設定や運用ルールが増えるケースもあります。どのシステムからどのデータを取り出し、どのように調整するのかといった判断が、特定の担当者に依存している状態です。これは属人化が解消されたのではなく、形を変えて残っている状態といえます。

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本当に欠けているのは「操作性」ではなく「つながり」

システムを見直す際、多くの場合は操作性や画面の使いやすさが重視されます。確かに、日々使うシステムとしての使いやすさは重要です。しかし、現場が楽にならず、判断が速くならない原因は、操作性の問題ではないケースがほとんどです。本当に欠けているのは、業務同士、データ同士の「つながり」です。

受注・在庫・生産・会計が別々に存在している問題

受注は販売管理システム、在庫は在庫管理システム、生産は別の管理表、会計は会計ソフトで管理されている―。こうした状態では、それぞれの業務は個別に正しく処理されていても、全体像を一度に把握することができません。どこかの数字が変わるたびに、人が確認し、調整し、説明する必要が生じます。業務が別々に存在している限り、全体としてのスピードは上がりません。

人がつないでいる限り、判断は遅くなる

分断された業務をつないでいるのは、システムではなく人です。担当者が複数の画面を確認し、数字の意味を解釈しながら判断を行っています。この構造では、判断の正確性は保たれても、即時性は失われます。また、人を介する工程が増えるほど、引き継ぎや説明といった間接業務も増えていきます。結果として、現場の負担は減らず、判断は慎重になる一方です。

経営判断に使えるデータが生まれない構造

データが分断されている状態では、経営判断にそのまま使える形のデータが生まれにくくなります。売上、在庫、原価といった情報が一つの流れとして整理されていないため、判断のたびに加工や補足が必要になります。これはデータが不足しているのではなく、データの前提が揃っていないことが原因です。つながりのないデータは、判断材料として十分に機能しません。

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ERPがなぜ企業にとってかかせないシステムとなっているのか

ERPは、「多機能な業務システム」や「大企業向けの仕組み」として捉えられることが少なくありません。しかし、ここまで整理してきた構造を踏まえると、人手が少なく、DX化が進んでいない中小企業こそ必要とされるシステムなのではないでしょうか。

ERPの強みは「多機能」だけではない

ERPは、在庫管理や販売管理、財務会計などを「単一画面で操作できる便利な多機能システム」として捉えられがちですが、その本質はそこではありません。

最も重要な点は、業務を部署ごとに切り分けるのではなく、業務全体を一つの流れとして捉え一元管理するという設計思想にあります。これにより、個々の部署の最適化ではなく、最初から会社全体の最適化を目指すことができます。

業務とデータを一本で考えるための考え方

ERPでは、在庫・販売・購買・生産・会計といった業務が、それぞれ独立した存在ではなく、同じデータを起点としてつながっている前提で扱われます。どこかの業務で発生した情報が、別の業務でもリアルタイムに受け渡される構造です。これにより、人が都度つなぎ直さなくても、業務と数字の関係が保たれます。

中小企業にこそ必要とされる理由

中小企業では、限られた人数で複数の業務を兼務することが一般的です。そのため、業務が分断された状態は、そのまま人の負担につながります。ERPが中小企業で注目されるのは、業務を一元管理できるからというよりも、「誰かが間に入らなくても回る前提」を作れるからです。効率化ではなく、構造を整理し業務を標準化することが目的だといえます。

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いま見直すべきなのは、システムではなく設計思想

ここまで見てきたように、システムがバラバラな状態は、システム自体の問題ではありません。どのようなシステムを使っているかよりも、どのような前提で業務を設計しているかが影響しています。最後に、いま改めて考えるべき視点「CAM's POV」を整理します。

今の業務は、どうつながっている前提なのか

受注から出荷、請求、会計までの流れは、どのような前提でつながっているでしょうか。システム同士が連携しているのか、それとも人が確認して補っているのか。この前提を整理しない限り、システムを変えても状況は大きく変わりません。

誰が、どの数字を見て判断しているのか

現場側と経営側で見ている数字は、同じ前提に基づいているでしょうか。判断のたびに説明や調整が必要になっているのであれば、それは個人の問題ではなく、構造の問題です。どの数字を起点に判断するのかを揃えることが重要になります。

「一元管理できていないDX」に気づけるか

DXのためにシステム導入をしただけで、部署間の業務とデータが分断されたままであれば、それは残念ながら本当のDXにはなっていません。ただしこれは失敗ではなく、途中段階にある状態です。そのことに気づき、次に何を見直すべきかを考えられるかどうかが、これからの成否の分かれ道になります。

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